ここ数年、「焼く」「煮る」「蒸す」に次ぐ新たな調理法として注目を集めている低温調理、最近では雑誌やテレビでも特集を組まれるなど日本でも大きな話題となっています。食材の旨味を存分に引き出すことができるといわれている低温調理を詳しく知りたいという方のために、今回は低温調理の基礎知識やメリットなどをご紹介します。
低温調理とは
そもそも低温調理とは、1970年代のフランスでフォアグラを美味しく調理するために確立された調理法といわれています。その大きな特徴は食材と調味液を真空パックに入れた後、100℃以下の温度管理されたお湯の中でじっくりと火を通していく、独自の調理スタイルです。
低温調理をすることで肉は柔らかく、また真空パックを用いるで食材から溢れる旨味を逃すことなく、浸透圧により充分に調味液が染み込んだ美味しい料理ができるのです。
低温調理のメリット
肉や魚を低温調理すると、非常に柔らかく仕上がります。これには、タンパク質の変性温度が大きく関わっています。例えば長い時間高温で炒めたり、焼いたりした肉や魚は固くなり、旨味も逃げパサついてしまいます。これは、肉や魚に含まれるタンパク質が高温での調理に弱いためです。
食材に含まれるタンパク質はある一定の温度まで加熱されると旨味が生まれますが、その一方で温度が高くなりすぎると水分が抜け固くパサついてしまうのです。そこで低温調理では食材のタンパク質が旨味になり、なおかつ水分が逃げていかない絶妙な温度でじっくりと食材に火を通していくことで、ジューシーで旨味のある料理を作ることを可能にしました。
低温調理では作るのが難しいローストビーフや、低糖質ダイエットにも効果的なサラダチキンに加え、ミートローフやアクアパッツァ、西京焼きなど、工夫次第で多様なバリエーションの料理を作ることができます。
低温調理の方法
現在、低温調理は非常に大きな注目を集めた為、専用の調理器具も多く市販され一般の家庭でも手軽に楽しめるようになっています。
例えば水温制御機能付きの低温調理器の場合は大きめの鍋に水を張り、低温調理器を設置し指定の温度にセットします。その後低温調理器によって指定の温度のお湯ができたら、そのまま鍋に食材と調味液の入ったジップロック(耐熱のもの)を入れます。(この際、ジップロックの口を開けたままお湯に入れることで自然に袋の中が真空状態になるため、中の空気が抜けたことを確認した後にジップロックの口を閉じます。)
後は所定の時間、低温調理器にタイマーを設定して放置しておくだけです。専用の器具を使うと非常に簡単に作れますが、もちろん自宅にある調理用の温度計を使えば同じように低温調理を行うことが可能です。その際には、こまめにお湯の温度を測り、一定の温度を保つ必要があります。
低温調理で気をつけておきたいこと
低温調理でもっとも大切なのは、食中毒を引き起こさないための対策をしっかりと行うことです。生の食材を低温で調理する際には、ごく稀ですが食材についた雑菌を処理しきれず、食中毒を引き起こす危険性があるといわれています。ですが、低温調理においても徹底した温度管理と充分な加熱に注意すれば未然に防ぐことができるので、しっかりと食材が加熱されていることを確認し、切り分けたあとに生焼けに見えるなど安全が不明な点があれば食べるのを避けるなどし対策を行いましょう。
肉や魚の旨味をより深める低温調理
低温調理を用いて美味しい料理を作るにはコツや工夫が必要です。もし興味はあるけれど、自身で調理をすることに不安を感じているならば、低温調理を教える料理教室などで、直接技術や調理の基本を学ぶこともできます。また、低温調理を売りにしたレストランも増えているため、お店に一度足を運び低温調理された食材がどのようなものなのかを食べに行くのも良いでしょう。これからさらに注目を集めていくであろう低温調理、気になる方はぜひ自分で調理に挑戦したり、レストランなどで味わってみてください。